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国語の授業実践記録
読むことを楽しむ(3年)
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     物語の続きを 予想しながら読むことを楽しむ
      ー「へらない稲束」(3年 東書) 3年)


 物語を読むことの学習で、楽しいことの一つに、主人公が、出来事にどのように対応しているかとか、場面がどのよう変わるか、出来事がどのように展開するか等を予想しながら読むという活動がある。
 この楽しさは、学習をする前にすでに、多くの子が、教科書の教材をほとんどを読んでいる、知っているという限られた条件の中では、成立しにくい。しかし、教科書の外に教材を求めていくと、この条件はそれほど負担にはならない
しかし、子どもたちが知らない教材を活用するということを考える時、みんなが学習するとなると、ある程度の学習内容の条件が整っいることが前提になる。難しすぎたり、易しすぎたりということになると、学習の効果を満たすことにはならない。
このようなことに配慮して、ごく自然な子どもの読みの姿を教室に再現させるようとして、教材「へらない稲束」(李錦玉 3年)を活用した。この教材は、場面のくり返しがはっきりとしていて、分かりやすく構成されているからである。
 子どもたちには、教科書の見開き2ページを複写して与え、続きを予想するという方法で読ませていった。(現在使用している教科書でなく、他社のものである。3年生の学力をもって読めると言う配慮があると判断したから)
 指導の手順として、先ず目標を考えた
  目標  物語の場面ごとにおもしろいところを見つけ、予想して読む力をつけることができる。
 授業では、プリントにした教材を1ページずつ手渡し、読み、話し合い、考えるという形態でを進めた。子どもたちは、読む範囲がはっきりしていることや、量が少ないことや続きへの期待もあって、意欲的に学習を進めていった。
 授業の実際は次のように進んでいった。(最初に1枚目について)
 (1)物語の最初の場面を読む
 T 今日の勉強は、お話の途中まで読んで、続きを予想ながら読むのです。予想すると
  言うことを、少し勉強しましよう。題は「へらない ( )」です。」( )にどんな言葉が入ると思い
  ますか。予想しましょう。
(最初は、発問の意図が理解できない子あった)
C へらないお金。昔話にあったみたい。よいことをしたおじいさんのお話。いくら
  お金を使ってもへらないとお話を聞いたことある。
 (この発言により、どのように考えればよいかの手がかりになった子があり、発言
   を求めるために挙手をする子が増えた。)
C へらないおなか。いつまでもおなかがへらないへんな話。
C へらないというのは、よいことをしたお話みたい。
C 同じことで、本当はへるものが、へらないということが面白そう。
T 自分でこうだろうなと考えてみることを、予想すると言うのですね。題は「へら
  ない稲束」と言います。日本のお話ではなく、韓国のお話です。
C 最初にプリントを渡します。お話の途中です。読みましょう。
C (プリントを読む。読みは氏名読、黙読、一斉読みをした)
(1枚目のプリントは、教科書をそのまま印刷した。次に示したのはその内容である)

     へらない稲束 李錦玉
 しずかな青い山のふもとに、まずしいおひゃくしょうが住んでいました。おひゃ
くしょうには、二人の男の子がありました。兄をチョル、弟をトルといいました。
人里はなれたさびしい所ですから、ほかにともだちもありません。チョルとトル
は、小さいときから、ねるのもいっしょ、おきるのもいっしょ。小川で見ずあび、
山で木登り、いたずらしてげんこつもらって、泣くのもいっしょ。たいへんなかよ
でした。
 チョルとトルは、お日様の光をいっぱいあびてかけ回り、元気よく大きくなりま
した。
やがて、兄がけっこんをし、赤ちゃんが生まれました。家族が力を合わせて働い
たので、くらしも少しずつ楽になりました。家の中には、わらい声があふれました
 ところが、ある日のこと。父さんが、重い病気にかかり、ねついてしまいました
父さんは、まくらもとに二人をよびました。
「おまえたちは、父さんがいなくても、ずっとけんかなんかするんじゃないぞ」

(2)場面について話し合う。
 T 読んでどんなことを思いましたか。
C はじめは、貧しいけれど、少しずつ楽になりましたと書いてあるから、よほどが
  んばったのだな。  
C トルとチョルは、とてもなかのよい兄弟ということがわかりました。
C トルとチョルのことはこれからどうするか心配です。
T トルとチョルがこれからのお話の大事な人なのです。この二人のことでわかるこ
  とはどんなことかまとめましょう。
C まずしいおひゃくしょう
C 二人はとてもなかよし。
C 働きの者で二人はなかよし。
C 兄弟が仲良し。
(文章を手がかりにしていくと発言が続き安定していく)
(3)続きを考えて書く
T 二人を呼んでお父さんは「おまえたちは、父さんがいなくても、ずっとけんかな んかするんじゃないぞと言いましたね。お話はどのように進んでいくのでしょう。
きっとこうなるだろうということを考えて、書きなさい。
(C 考えたことを書く)

 ・それから、父が死に、やがて、弟がけっこんしました。( 貴誠)
 ・ 「うん、わかった。」兄弟は、ちかいました。(尾崎 友亮)
 ・お父さんは、もっと重い病気になって、死にました。トルとチョルは二人が仲良くするにはどうするかについて考  えました。( 栞莉)
 ・「父さんわかったよ。」お父さんは目をつむりました。
チョルとトルは、父さんの手をにぎりました。(まりこ)

 T それじゃ、続きのプリントを渡します。予想通りであったかどうか、読んで下さ
  い。(続きは次のようになっていいる)

チョルとトルは、父さんの手をしっかりとにぎって、
「おらたち、いつまでもなかよくするよ。」
父さんは、うなづくと、目をつむりました。

このような方法(本文を読むー場面について簡単な話し合いー続きを予想する)をもとに、学習を進めた以上のような考え方で進めていった成果は、先ず、題名の予想で、物語への興味を持ったことが次からの学習の蓄えになったことが挙げられる。ここで、予想することのい意味を子どもなりに感じとったからである。次に、プリント1枚ずつ学習の範囲にしたことが挙げられる。子どもたちにとって、考える範囲が少ないこと、次がどうなるかという未知の部分の楽しみがあることなどで、教科書にある教材を読む時よりも意欲を出す子もあった。
ただ、文章の全体が見えないために、子どもが見つけた言葉の意味を確かに理解したり広げたりすることに甘さがたったり、言葉のあてっこになってしまった傾向がみられた。これは、部分を提示するという方法の限界であろう。
 なお、他の場面での子どもの予想は次のようなものあった。

・それからチョルは、前よりももっと働いて、どんどんくらしを楽にしていきま
 した。
・やがて、兄さんのチョルが自分のために、前よりも働いていてくれるのに気が
 ついて、自分ももっと働くようになりました。着物やお金をちょっとずつ分け
 て上げました。
・ 奥さんにトルの着物を作ってもらいました。( 梓)
・チョルはトルにないしょで、着物や、いろいろなものを相談してかってやろう
ということになりました。( 尚)
・稲がせいちょして、やがて、お米になりました。お米を、弟にことを思って、
トルに 分けた( れい子)

 これらの感想は、物語の主題に関わる部分での予想があった。そのことから、
続きを予想する読みは、読み方の一つの方法になるであろうという手応えを得た試みであったといえる。
 
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