おむすびころりん(1年)
「おむすび ころりん」は、音読が楽しめる教材である。難しい言葉があるのだろうが、子どもたちは、言葉の抵抗を乗り越えて、楽しんで読んでいる。
その楽しさを読むという部分だけにしないで、更に広げていき、子どもたちの好きな昔話の一つとしての「おむすびころりん」にしたいと考えた。「おむすび ころりん」
は、「むかしむかしの はなしだよ」という読みやすい、あるいは、読んでいて気持ちのよいひびきが、子どものこころを捉える。この教材の特性を生かして、知っている昔話から出し合うことを手がかりにしようと考えた。
先ず、授業の始まりを次のようにした。
と板書し、次のように発問をした。
たろう (子どもたちの知っているむかしばなしを出させるきっかけにした
いと考えての働きかけである。)
T 昔話には、いろいろな「たろう」さんが出てきます。どんな「たろう」さんを知 っていますか。知っている人、手を挙げて発表しなさい。
C ももたろう
C うらしまたろう
C きんたろう
C ちからたろう
C 3ねんねたろう
T じゃあ、どんなお話か、お話してくれますか。
C ももたろうは、ももからうまれたの。むかしむかし おじいさんとおばあさんが いました。おじいさんは山へしばかりに。おばあさんは 川へせんたくに行きまし た。川上から ももがどんぶらこどんぶらこっこと流れてきました。
C きびだんごを持っておに退治に行くんだよ。
C おにが島へ行く途中、犬やきじをおともに連れて行くんだよ。
T よく覚えているね。浦島太郎も知ってるね。ももたろうのお話では、おじいさん とおばあさんが出てきましたね。おじいさんとおばあさんが出てくるお話ではどん なお話を知っていますか。(板書)
おじいさん・おばあさん
C かちかちやま
C おむすびころりん
C おおきなかぶ
C いっすんぼうし
C かぐやひめ
C したきりすずめ
C おじいさんとおばあさんは最後は幸せになるのが多いね。
T おむすびころりんもおじいさんとおばあさんが出てくるね。本を読みながら
どんなお話だったか思い出してみよう。(音読)
むかし むかしの はなしだよ。
やまの はたけを たがやして、
おなかが すいた おじいさん。
そろそろ おむすび たべようか。
つつみを ひろげた その とたん、
おむすび ひとつ ころがって
ころころ ころりん かけだした。
まて まて まてと おじいさん、
おいかけて いったら おむすびは、
はたけの すみの あなの なか、
すっとんとんと とびこんだ。
T 読んで楽しかったですか。
C 面白い。ころころころがったのが面白い。
C むかし むかしの はなしだよ。面白い。
(一人が読むと、他の子も一緒に読む。本を見ないで読んでいる子もいる)
T こんなお話みたいに ももたろうも作りましょう。初めはどのようにしますか。
C むかし むかしの はなしだよ がいいよ。
C ぼくもそう思う。むかし むかしの はなしだよがいい。
T そうして置こうね。では次はどうしよう。やまの はたけを たがやして、
おなかが すいた おじいさんと書いてあるね。
C おじいさん やまへ しばかりに がいい。
C やまへいったおじいさんとかわへいったおばあさんと
T そうだね。気持ちがよいのはどっちかな。
C おばあさん かわへ せんたくに
(このような話し合いを続け、「おむすびころりん」のようなお話を続けていった。)
ももたろう
むかし むかしの はなしだよ。
おじいさん やまへ しばかりに
おばあさん かわへ せんたくに
かわには ももが どんぶらこ
どんぶら どんぶら どんぶらこ
せんたく やめて おばあさん
ももを かわから もちかえり
ももを きったら おとこのこ
おじいさん おばあさん よろこんだ
つよいこ つよいこ おとのこ
ふたりで だいじに そだてたよ
これは、子どもと一緒に作った「ももたろう」である。子どもたちの発言をつないでいきまとめたものである。子どもたちが作りながら「おもしろい」と言い、得意げに発表し合ったものである。
授業中の子どもの表情が明るかったのは、言葉にリズムにひかれていたからであろう。音読にふさわしい教材を、自分たちでもまねて作るという方法により、教材との距離を小さくしたいと考えての実践である。
また、知っている昔話を出し合うという導入の働きかけは「知っている」ことを得意とする1年生の気持ちを大事にしたいと考えたからである。また、昔話の一つとして、「おむすび ころりん」を捉えさせたかったからである。 |