▼この子に言葉の力があったらもっと豊かな生活になるだろうと思うことがある。言葉が貧しいのでトラブルも解決できないだけでなく気持ちと反対の方向に事態が動く。
▼よくある教室のできごとのトップは喧嘩であろう。よく見ているときっかけは些細なことである。「筆箱が邪魔になる」「ランドセルにさわってよごした」ということ等。最初の段階で解決ができないと口論になり、更に手を出すということにもなりかねない。「筆箱が邪魔になってることに気づかなかったの。ごめんね」とか、「少し言い過ぎたよ」という言葉が交わせたら、諍いは仲良しの始まりになる。しかし、残念ながら、許し合う言葉を知らない子が多い
▼気持ちが合わない友達について語るとき「いつもいたずらをして困る」「みんなが迷惑をしている」という言葉を好んで使う子がいる。子どもの使う「いつも」や「みんな」に気をつけた方がよいという知恵をいつのまにか身に付けてきた。諍いの程度にもよるが、大きな喧嘩になる前に、時間をかけて「いつも」や「みんな」と解きほぐしていくといつの間にか「ぼくも悪かったのだけれど」とか「いたずらをしようとする気持ちはぼくにもあるのだけれど」という自省の言葉も生まれてくる。言葉で考えるということの尊さを共有できる時である。
▼今の子どもたちは、豊かな人間関係を生み出す言葉をあまり知らないような気がする。「ごめんなさい・ありがとう・いっしょにしよう」など良い言葉が身近にあるのに。
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