「命のバトン」(相田みつお)の詩がある。
自分の命は、何億人もの命を受け継いでいるという意味を表した詩である。
その詩を、道徳の中心資料として活用した授業を参観した。
詩の大体の内容を説明した後、指導の先生は子供達に
「どんな気持ちでバトンを渡したいですか」
と大胆な発問をされた。
私だったら何と答えようと考えても、いい答えが見つからなかった。
案の定、子供達の反応は鈍かった。しばらく間を置き、一人の子に指名をされた。
その子は「後よろしく」と答えた。
素朴で、暖かみのある言葉であった。「あとよろしく」を、この子が言ったから納得ができたという
心に残る言い方であった。
その言葉を受けて「これからも元気に受け継いで」とか「これからもちゃんと受け継いで」という
発言があったが、最初のこの言葉の重みだけが妙に心に残った。
授業の後、「「難しい質問でしたね」と感想を述べると、「私もそう思った。でも、
あの時山田さん(仮名)と、目があって思わす当ててしまった」
と、指名の裏話を披露して下さった。「あとよろしく」は絶妙の師弟の心のバトンで結ばれた
答えだったのである。
詩も授業も難しかったが、ほっとする言葉に出会ったことがうれしかった。
きっと山田君はこの詩とこの授業を心のどこかにしまっていいるだろうなと思う
心に残る道徳の授業であった。
後の研究会で「わたし」の今、お父さんとお母さん、更に、そのお父さんお母さんの系譜を書かせてみたらと
提案をしたが、「あとよろしく」を超える授業になるかどうかは定かではない。
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