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国語科教室
教えて下さい(20/7/15)
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新任教師として教壇に立った卒業生からの電話。受話器の向こうの声が弾んでいる。
彼女は、特別支援学級の補助的な仕事を毎日、右往左往の連続という報告が届くが、今度の電話はそうでなかった。
「丁寧な言葉で話をするって大事なことですね」
と言葉を結んでいる。
  彼女の担当した子は、コミュニケーションに脆さがあるという。うまく気持ちが伝わらないのでいらいらする。すぐに手を出すので、注意を受けることが多い。人間関係力が弱いと感じた彼女は、丁寧語から指導に入った。
  何か依頼する時、友達言葉より粗い言い方であったので、一つの作戦として、
「お願いします、ありがとうございます、を、言わなかったら手伝わない」
と心に決め、それをその子に宣言した。宣言したものの、この子とこのまま心が通じないのではないかという不安を抱えたまま日々であっという。不安な日々の気持ちが痛いほどよく分かる。しかし、彼女は、その考えを通した。この辺りが補助の強さだったのかもしれない。
  2ヶ月を過ぎたある日、用事を頼みにきた時、
「先生、教えて下さい。」
と文末を丁寧な言葉で依頼をした。今まで不安な気持ちがこの瞬間吹き飛び、彼女の言葉で言えば「思わず涙が出てきた」「うれしくて、抱きしめた」「言えたじゃない」と感激のひとときだったという。以来、その子は、丁寧な言葉を使う子になった・
  丁寧な言葉は、家庭でも使えるようになったという。「この頃、丁寧な言葉で話ができるようになった」といううれしい連絡が届く。職員室でも「いい子になった」とその子の評判がすこぶる評判がすこぶるよくなった。丁寧語を使うようになったかがを知りたくて
「どうして、丁寧にお話ができるようになったの」
と彼女が尋ねたところその子の答えは、
「だって、先生が好きだもの」
だった。またまた、「うれしくて泣いた」というのが電話の向こうの声。丁寧語人は育てる。彼女は、いいこと出会ったと思いながら携帯を切った。

 
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