小学校国語科の指導で意見文を書くと単元があった。意見文のテーマは「琵琶湖を美しくしよう」で学級の全員が取り組んだ。
最初の段階では、「琵琶湖が汚れている。美しくしよう」ということで、書き始めた。しかし、記述をするには、充分な材料がなく、「琵琶湖は汚れている。みんなの力できれいにしよう」という言葉だけが並ぶ作文になってしまった。子どもたちは、琵琶湖についてほとんど知っていないことに気づき、琵琶湖をもっと知ろうという課題をもった。
湖岸へ出かけ、琵琶湖をみた。みんなが騒いでいるほど汚れていないという感想を持った子もいたし、予想以上に汚れているという子いた。そこで、見ただけでは分からないので、湖岸の散策するという時間を設けた。
琵琶湖で遊ぶ子、ゴミを集める子、汚れを調べる子など琵琶湖との関わりは様々であったが、子どもたちの琵琶湖への関心を高めるに充分な時間であった。
教室にもどり、びわことどのように関わったかを話し合った。ゴミを集めた子は、しばらくの事案であったのに、持ちきれないほどの空き缶や菓子の袋などを集め、汚れのひどさを問題にした。湖岸で遊んでいた子はボランティアで湖岸の清掃をしている人と出会い、「大阪や京都の人がこの水を飲んでおられるので、滋賀県人として責任を持たないと」という話を聞き、あらためて琵琶湖に関心を持ったとう感想を披瀝した。
琵琶湖で見つけた課題を共有する過程でもっと琵琶湖のことを知ろうということに発展をした。個々に調べたいことや考えたいと思うことに違いがあり、仲間を募るという方法でグループを作る時間を設けた。
・水の汚れはどこから始まるのかを知りたくて琵琶湖の水源をたどるグループ。
・遠足に古墳群のある岡からみた琵琶湖の美しさが忘れられず、その景色を確認するグループ
・琵琶湖の水に関わる仕事をしている人に面会を求め、琵琶湖の将来について考えるグループ
・水の汚れを調査をするグループ
・ごみ拾いをしながら、琵琶湖を美しくすることに行動化するグループ
・昔の琵琶湖と今の琵琶湖の違いをインタビューを通して情報を集めるグループ
等、課題を共有しながら活動を展開していった。
子どもたちが本当に知りたいという願いを持っていただけに、放課後の時間や日曜日を利用して積極的に活動し、それぞれの経験を交流する時間も盛り上がった。
水源をたどったグループは、「最初は一滴で、飲めるくらいの水なのに、川下へ行くほど、手に触れるだけでも気持ちが悪いぐらいに汚れている」という感想を述べたり、「少し前までは琵琶湖で泳いでいた」という人の話を紹介したりして、実感として琵琶湖の汚れを語り合う時間もあった。さらに、琵琶湖の浄化を仕事にしている人からは、よい水の確保のために、研究をしているという話も子どもたちの心を捉えた。
この事例は、「総合的な学習の時間」が設けられる前の物である。作文を書くという学習の発端ではあったが、真剣に琵琶湖に向かい合う中で体験的な活動を積み上げたものして価値がある。
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