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はじめの一歩
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はじめの一歩(24/01/03)

 子どもの遊びに「はじめの一歩」がある。オニになった子が目をつむり、10(トオ)数えるタッチをするというオニ遊びのひとつである。数え方は、私の経験では、「ボウサンガ・・・」から始まると記憶している。大体、10文字。10(トオ)数えている間にオニに気づかれないように近づいていく。オニが1数を数え終わったら、不動の姿勢をする。動いたらアウトという約束である。この遊びの面白さは、最初の一歩の長さの確保である。その長さの長短が、遊びの主導権を握る。だから、知恵を出す。その知恵の出し合い、せめぎあうのが楽しいのである。
この遊びのルールを知っている子は、最初から弾みをつけて跳ぶ。ルールを知らない子は見よう見まねで覚えていく。そのうち、遊びの主導権を握る面白さに気づいていく。
※ ※    ※
ある時、この遊びしている姿を公園でみた。近所の仲良しグループだろうと思っていたがそうではなさそうな雰囲気であった。
遊びを仕切る子がいて、その子の決めたルールで遊びが進んでいた。その中に、ルールをしっかり覚えていない子がいた。その子の動きを見ていると、仕切る子の動作を真似たり覚えようとして一生懸命であった。遊びに夢中というようにも見えた。その子は、何回か負けを繰り返すうちに、遊びの方法を理解していく様子であった。負けが続くと嫌そうにすることもあった。けれども、失敗しながらも、「はじめの一歩」をどのように確保したらいいのかという知恵を身につけていった。
オニ遊びのいいところは、一回の遊びの時間が短いことである。失敗しても、負けても、次にまた、初めから遊べという手軽さがあつ。意地悪を言われたも深く残らない明るさもある。負ける、失敗をすることを乗り越える力がつくのである。
子ども達同士が上手に遊んでいると思って時のことである。
「もっと、早く走りなさい。」
「大きい子は小さい子に教えたあげて。」
「跳ぶときは、このあたりから走るのよ。」
と、お母さんらしき人の声が聞こえてきた。
遊びを仕切っている子の横で、頼りなさそうに見える我が子に辛抱ができなかったのだろう。まるで、遊びの主導権を我が子に譲ってほしいといういうような勢いであった。その時、そのように言わなくてはいけない母親らしき人の気持ちも理解できた。
※     ※     ※
この時の教訓は、子どもが夢中になっている時には、大人の介入は子どもの成長を阻むということであった。なぜなら、この母親らしき人の言葉で、遊びに夢中になっている時間を止まってしまったからである。母親らしい人が関わったことを境にして、雰囲気が変わった。遊びを仕切っていた子は勢いをなくした。負けていた子が勝ってもそこには、夢中になって遊んだというさわやかさが観られなくなっていた。自分の力で「はじめの一歩」を確保した勢いを感じていいからである。遊びが、母親らしき人の指示に通りに動き出した。そこには、「はじめの一歩」のせめぎ合いはなくなり穏やかな遊びになった。見た目には、仲良しに見えた。が、それは、子どもが夢中になる大事な部分を除いたものであり、子ども同士の知恵で獲得したものではなくなっていた。
子どもが夢中になっている時の親の関わりの難しさを教訓として得たように思えた。
※    ※    ※
学校や保育園の4月は、「はじめの一歩」ばかりである。新しい仲間との出会いは、大人が期待するような美しい物ではない。無意識のうちに、互いに、自分の位置を広げるためのせめぎ合いをしている。大人のはそれが見えないので、はらはらする。複雑な気分になる。「はじめの一歩」の距離を長くするための知恵を出しと思えば、子どもが愛しく見えてくる。その余裕がほしい。
ているのである。先生に注目してほしい子は、いたずらをしたり、 子ども「はじめの一歩」は多様である。目立つような意地悪をすする。物を取り上げる。大声で泣く。妙にやさしくする。利口ぶる等々。これらのことは、今までの経験や生活で覚えたこどもなりの知恵である。「はじめの一歩」のために、自分のしてきたことをそのまま使おうとする。それが知恵である。しかし、子ども同士のせめぎ合いだから、混乱も起こる。、にらみ合いも諍いもある。
保育園や学校の先生は、「はじめの一歩」は、繰り返すことが大事だと考えている。本当の遊びと同じよう、集団でもまれながら、育つことの大事さを知っている。だから、寛大である。大人の都合を優先するのでなく、せめぎ合いを通して育っている子どもを見守る余裕を持っていると誰でも寛大になれる。その心の広さが、子どもを知恵のある子に育てていく。
子ども達の4月は、ひたすら、これからの生活の主導権をにぎるせめぎあいである。「はじめの一歩」が、負けても勝っても子どもには楽しいのである。

 

 
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