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少女のような大学生
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少女のような大学生(26/09/02)

 数年前のこと。教育実習生がお世話になっている高校から連絡が来た。生徒に「くらい」と言われた事がショックで教室に入れなくなった訴える。このまま、教育実習を続けさせるかどうか判断を求めるという内容であった。
学生を面談した。固く口を閉ざしていたが心の整理がついたのか、ぽつぽつと話し出した。話の内容の概要は次の通りであった。
自分は、家の期待を背負っている。弟は頼りないので、自分を何とかしたいと親が色々と尽くしてくれた。そのことが分かっているから、学校でいじめられても、悲しいことは言わず元気にふるまって親に心配をかけまいとしてきた。期待におしつぶされそうになる。
小さい頃から、家庭は自分にとって安住の場ではなく緊張の場だった。だから、できるだけものを話さず、まじめを装ってきた。
教育実習に来ても、教壇でおびえる。自分は教師に向いているとは思えない。だから、家に連絡をしても「何を言ってるの」と電話を打ち切られ、本当のことが言えない。
「進路決定の今、悩んでいる」と言って口を閉ざした。今まで緊張していた心の糸が切れた少女のような大学生であった
話を聞きながら、20歳を越えた学生が、この後、どのように自分の人生を切り拓いてていくか。更に、熱心に子育てに励んだ母親が、「家庭は安住の場でなかった」と聞いたらどう思うだろう考え気持ちが重くなった。
日々、ランドセルを背負い、明るく登校してくる子供たち。この人達が、少女のような大学生にならないようにと祈るような気持ちで見守ることが時々ある。子どものためにと思っていることが時には、子どもの心をこわしているこtに気づかない。大人ってそういうものだと割り切っている子もいるが。

 

 
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