○道徳授業を参観した。新尾道駅から車で10分、国語・道徳の研究に成果を上げておられる学校。
参観したのは2年生。姿勢正し、はっきりとした声で話しができる躾が行き届いた教室であった。
授業は、自分の生き方を見つめ、新しい自分との出会いを喜び合う姿が授業の節々に見られた。時には本音で語り、時には友達の意見に自分を見つめ直し、時には家族を思うという姿に子どもが大きく見えた授業であった。
○授業のねらいは「家族の人たちを敬愛し、家族のために自分でできることを進んでしようとする心情を育てる」であった。
「家族の人たちを敬愛し」「家族のために」といいう言葉が並ぶと、何かをさせないといけない等、せっかちに考える。しかし、2年生の子どもにとって、そんな難しいことを理屈で説明しても、心に響くものはない。むしろ、「家族っていいな」「私も家族の一員である」という気持ちをそだてることであろう考えた方が分かりやすい。
授業は資料「おるすばん」(『心の元気』広島県教育委員会編)をについて考えることが中心であった。
資料は、いつもは家にいるお母さんが、急用で出かけたという状況設定で始まる。主人公は後かたづけをしたり、洗濯物を片づけたりする。しかし、洗濯物を地面に落とすなど失敗もする。そのことを知り、お母さんは「おかあさんを助けようとしたのね」と包み込むような言葉で子どもに話しかける。
○資料は絵話の形で語りかけられる。主人公の心情に共感したり、自分の生活と重ね合わせている様子が子どもの表情からみられた授業であった。何よりも印象的だったのは、
「あなたは、このお母さんのどこがすき」という問いかけであった。多くの授業が「この時どんな気持ちだったでしょう」という問いかけで分からせたような気持ちにさせていることが多い中で、主人公の生き方を丸ごと受け止めているお母さんに目を向けさせる包容力のある働きかけであるように思えた。これは「私のお母さん、大好き」へつなげる布石でもある。
○授業の終末に、自分たちにも主人公のようなところがあることを確認し、お母さん亜hどのように私を見ていてくれるか考えるという場が設けられた。
「こころのノートを開いてごらん。あなたのお母さんもお話のお母さんと同じように好きなところがいっぱいだよ」というような意図で、お母さんからの言葉を読ませた。
「こころのノート」を開きお母さんの言葉に見入る子ども達。表情が和らぎ、輝く。
「ぼくのお母さんは忙しいから、書いてくれないよ」
とぽつりと言った子が、お母さんの言葉を見つけ、食い入るように読む。まさに、家族と私の絆が太くなった瞬間であった。
○この道徳の時間までに次のような仕掛けがあったという。
@夏休みの宿題が「おうちの人のために何か一つ仕事を見つけてやり続けよう」であり、 どの子も資料に共感できる経験があった。
A夏休み明けの参加日に、宿題の意図を説明し、道徳の時間に活用する資料の説明をす るとともに、「お手伝いをしたこと」に対する感想を書いてもらう(お母さんから子 どもへのメッセージ)
Bメッセージは「こころのノート」に記入を依頼し、授業まで子どもに伏せておく
一時間の授業のためにたどった長い道程であったが、その成果は確実に子どもの心に響いているという手応えを感じた。 |