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国語科教室
一本のマッチ
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一本のマッチ(26/01/03)

ナイフで鉛筆が削れない、リンゴの皮がむけない、美しい夕焼けを知らないという子ども姿が社会のニュースになったことがありました。少し前のことです。その時は、日本の経済は好調で右肩上がり。いつまでも、この繁栄が続くと思い込んでいた時代でした。その頃、小学校5年であった吉田さん(仮名)に偶然、町で出会いました。今は、中学生、高校生の子供の母親です。小学校の時代の話が盛り上がりました。
吉田さんといえば、私にとって一本のマッチが一番印象に残っています。そこで、記憶を確かめるべく、「マッチのこと覚えていますか。」と、尋ねました。「まあ、先生」と少し恥ずかしそうに、そして、懐かしそうのその頃のこと思い出しうなずきました。次の話は、吉田さんが、話を聞かせてくれたことを、まとめたものです。
小学生の頃の吉田さんは、本の読書が好きな子でした。しかし、泥んこになって遊ぶとか、転んで擦り傷の怪我を経験したことがないというおとなしい子でした。吉田さんが5年生になった時です。学校行事に新しく全校で野外体験をするというのが始まりました。ナイフで鉛筆が削れないような子どもが育っては大変という危機感が体験的行事の背景にありました。具体的には、1年生から6年生をグループ(1グループ12人)にして5年生と6年生が下級生の面倒をみると班活動です。主な活動は、飯ごうでご飯を炊きカレーライスを作ることです。
この体験的行事は、自分のことはしっかりできるけれど下級生の面倒をみるのは苦手という吉田さんは苦痛でした。特に、飯ごうでご飯を炊くという経験はありません。6年生にお願いする予定でその日を迎えました。しかし、頼りにしていた6年生が欠席。全ての役割が吉田さんい任されました。ピンチです。
飯ごう炊さんの時間になりました。マッチで火をつかなけらばなりません。マッチを使ったことのない吉田さんには、火のつけかたが分かりません。マッチを擦ることができないのです。マッチに火が付いても、怖いので手からマッチを落としてしまうからからです。「おねいちゃん、まだなの」1年生が、おなかをすかして尋ねます。他のグループがご飯を炊き終わる頃になってもまだ、火が付かない状態でした。誰も助けてくれません。そのうち、見かねた4年生が、マッチを擦り、簡単に火をつけ、ようやく、夕食ができるという状態でした。吉田さんにとって辛い体験でした。母親になった吉田さんは、「経験していないことはできない」ことを学んだ出来事でした。

 
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