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国語科教室
誇りに思う
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もう十数年も前の話。
教室でボール投げをガラスをわった三人組が連れられてきた。
叱られる事に馴れているのだろう、神妙に下を向いて小言を待っているようには
様子に見えた。
何を言っても、時間が過ぎるのを待っているように見える彼らには言葉が通じないようにみえた。とにかく、頭を上げ、目の輝きを見たかった。思いついて言葉が
「あなたたちが、この学校のこどもであることをを私は自慢に思うし誇りに思う」
この一言で、頭がさっと上がった。いい目をしていた。その目を見たとたん、
「あなたたちには、他の子にない勇気がある。決断力がある。行動力がある。」
と言った。ガラスをわると言う行為は、この三つの力の総和とふっと思いついたからである。いい目をしていたのでいい答えが出たのだろう。今から思えば。
「ただ、その力を今日のように出す時代ではありません。少し前の時代、戦国時代とか、人々の心が今のような落ち着いた時代でなかったら、英雄です。しかし、ガラスを割ることに使うものではありません。あなたの力を、今の時代に合うものに使って下さい。
一週間、それを探して下さい」
といおう意味のことを言って考えさせた。勇気、実行力、決断力が一つになって行動できることを探させて実行させた。一週間という期限を決めた。
一人子は全校の窓の開け閉めを、一人の子は靴箱の整頓を、一人の子は自分に気持ちを学級会で伝えた。それぞれに自分を変える努力をした。
一週間後、晴れやかな顔で報告にきた。
「約束を守ったのでガラスのことは終わりにしましょう。元の自分に戻ってもいいし。又ガラスを割ったらきて下さい。自分をいけないこと思ってはいけません。勇気と実行力と決断力があるのですから」
といって教室へ帰ってもらった。
あれから、十年以上たっている。その子と偶然電車の中であった。
変わらない目の輝きであった。

 
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