「花藻」全国大会(平成26年度)
草餅に母の小さき指の跡
庭下駄の足裏になじむ夏初め
舐めて春夢二の切手ある浅き
注釈もひらがな母の種袋
物忘れその先言わず浮いてこい
会えそうな気がして夏の帽子買う
新緑や迷わず駆ける男坂
母の日や話をためて母を訪ふ
風を切り風をながして夏燕
一枚を脱がせる母の衣更え
素麺やつるりとかわす妻の智恵
海の彩熟れて干さるる目刺しから
真っ新なそら押し上げて松の芯
「花藻」観桜句会吟行作品(平成26年4月10日)
花藻観桜句会優秀作品
飛花落花押し見て風の一呼吸
紅の走る金魚田花曇り
金魚田は彩湧くところ春の水
城跡や見下ろす濠の花溜まり
城跡の春熟れてをりあがぐら酒
一句得て後は奔走花莚
掬われて跳ねて金魚の売られけり
※ ※ ※
『花藻』一月号(VOL66 NO771)
願い事有る身無い身も初詣 夏生(主宰)
病人も花柄パジャマ初かがみ 茜
美しき出逢いを重ね初鏡 紀子
子の描確かな未来明けの春 嘉典
一枚をはがし未知なる初暦 となみ
呑助の札ぶら下げて年賀かな 武人
玉砂利を踏めば背の反る邪気かな 好江
憧れは京焼徳利に寝正月 壽子
いくたびの縁重ねて雑煮箸 泉
天平の礎石三百余秋うらら 光栄
晩秋の風のオブジェや影白し 翠
鍵穴に鍵かみあはず黄葉す 修
落葉焚く火種に奢る文の束 均
☆平成21年12月6日は花藻代表者会でした。
下半期の事業報告と平成22年上半期の事業計画が協議内容でした。
後半は句会です。題はマスク・山茶花 互選高点句などです。
山茶花や祖母の匂いの古箪笥
マスクとる心の角を開きけり
山茶花や散敷く石の薄化粧
マスクして吐きたき言葉止めておく
通勤の美人も鴉となるマスク
街をゆく顔いっぱいのマスクかな
校塔やマスクの児らを迎えけり
俳誌『花藻』10月号より
・帰省子が去り退屈な日が戻る 夏生
・窓側の席ゆずられて夏ひらく 光栄
・疲れ知らず祭りの後の浴衣干す はる子
・潮騒に育つ岬の蝉しぐれ 正子
・カンナ炎ゆ脱反抗期逞しく 幸司
・蜘蛛の囲の張りに殺気のありにけり 均
・歯科の椅子ぐっとのけぞり雲の峰 となみ
・浮いてこい哭けば月日が戻るかも 春月
・砂日傘音なく雲の飛行船 武人
俳誌「花藻」平成19年9月号
湖の色乾き始めて盛夏来る 夏生
一粒の安らぎでよしさくらんぼ 茜
青田吹く風の躓くところなし 光栄
落下さん縫いし指先紫蘇をもむ 満寿枝
反抗期熟しきったるトマトかな 幸司
夏痩せて体重計を踏み直す 千代
青春の揺れし傷みや月見草 修
黒揚羽湖に翔つとき風騒ぐ しげとし
蓮日記の表題凜と夏ふかむ 美儀
前世で逢った気がする黒揚羽 となみ
花藻・誌上句会(課題・上) 高点句
落椿人は秘密の場所を持ち
臥す人に合わせ鏡の牡丹かな
人の名を思い出せずや春の鬱
人生はジグソウパルズ風光る
沙羅散りぬ平家女人の気品持ち
恋に似て月下美人に逢いにゆく
花藻(平成19年8月)
駅長の昼の頬杖麦の秋 夏生
梅雨晴れ間一筆箋で足りる恋 茜
食器棚碧き涼しさ並べけり 満寿枝
青奈落隠す地獄の釜の蓋 翠
湖風を知り尽くしたるヨットの帆 京子
時の日や鼓膜小さな音拾う 幸司
虚しさを啼いてまぎらす梅雨鴉 和士
歳月の動かぬ鏡雷鳴す 修
花藻(平成19年6月)NO740
変わる人変わらぬ桜運河昏る 夏生
独り来て花人の中まぎれをり 翠
電子辞書やたらに押して鳥曇 春月
辻褄の合わぬ人生石鹸玉 紀子
落花舞う駅から始まる一人旅 となみ
掌に花遊ばせて長電話 幸司
花藻(平成19年5月)NO739
一病を守る錠剤戻り寒 夏生
お水取り火の粉四角に宙を舞う 満寿枝
紙とペン且つ消しゴムや二月尽 翠
水かげろう映して池の春隣 京子
春愁や文箱に眠るパスポート 芳江
帽子屋の鏡に春が忍び込む 幸司
花藻(平成19年4月)NO738
肋骨の軋み今夜は寒の入り 夏生
枯れることできぬ造花や春寒し 茜
装いも春めく耳朶にシャネルの香 満寿枝
淡雪の街角に買ふ宝くじ 和士
今日くらい魔女にならず水仙花 となみ
春愁やピエロに光る空涙 近江
寒明ける風は斜めに古戦場 幸司
花藻
空蝉に早や生きものの臭ひ無し いさを
もう冬の貌した湖へ雨太し 夏生
木犀のシャワーを浴びて朝が来る 光栄
鰈干す北国の空崩れそう 幸司
城下町湯屋の煙突天高し 照子
ジェラシーをもう隠せない林檎です 修
花藻
カレンダー日毎痩せゆく師走かな いさを
奈良の秋仏の横顔ばかり見て 夏生
マッチ摩り残菊の香を燃やしけり しげとし
城跡に佇み彩なき風に逢う 幸司
刃ともなりし薄を手折りおり 今日子
虫の夜もまた引き直す広辞苑 美儀