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俳誌 花藻
花藻
大津絵の鬼もたじろく炎暑かな      雄 三
カンナ燃ゆ女の炎まだ失せず      あやこ
花火師の気魄一っ気に炎立つ      紀 子
炎天の石は語り部兵の墓          修 
色紙の写楽目を剥く炎暑かな      彩  子 

花藻
湖の紺天上より濃し秋始まる     いさを
種飛ばすこと競い合い西瓜食ぶ   紀子
しなやかに京の女の秋袷       今日子
天に描く切り絵のような大花火    幸司
少年と少女夕焼け共有す       彩子 

花藻 
風は秋童話のやうな城に佇ち     いさを
幼くてまだ恋知らず草の花      茜
名月を隠し能面虚ろなる       満壽枝
サーカスのピエロ父似や虫の声    みどり
秋の沼水面へ夕日落ちきれず     汀子
一村が今も血族曼珠沙華       夏生
臍出して夫似の羅漢秋の蝶      青波
石庭の石みな秋の声発す       和士
花野ゆく一人の女になりきって    紀子
みそ汁の具にするほどの菜を間引く  春月
城壁の白より白き秋澄めり      今日子
刈り田あと白い煙が帯となる     衣子
利を追わぬ善きことなせり秋麗ら   幸司

花藻
 ひぐらしに耳を預けて面を彫る    いさを
 旅カバン離島の秋をつめ残す     茜
 向日葵に胸底の詩覗かれて      光栄
 秋刀魚焼く別の生き方知らず老い   満壽枝
 彫り深き桔梗の空でありにけり    みどり
 むれなしてああだこうだと秋の鯉   汀子
 また曲がる径は城沿い萩の風     夏生
 おしゃべりに大ひまわりの疲れけり  青波
 切り株は秋の詩人の指定席      和士
 肋骨の溝を深めて猛暑去る      紀子
 生涯に誇るものなし茗荷汁      春月
 曲がりしは曲がりしままに糸瓜垂る  となみ
 名月に手が届きそうビル屋上     幸司

花藻683号
    ぎしぎしと肋骨鳴らす残暑かな  いさを
    ラムネ飲むこの青空を独り占め  茜
    碧き灯に平家哀しや恋蛍      満壽枝
    蛍の灯とぎれとぎれに水の音   汀子
    天守は遠し心太でも喰らおうか  夏生
    ドロップを舌に遊ばせ敗戦忌    春月
    向日葵や喉を潤す水もらう     となみ
    鍋みがき小さき幸せ濃紫陽花   紀子
    朝顔の蔓がはみ出す子の日記  幸司

花藻 679(平成14年 5月)
 
地に落ちてまんだらとなる寒椿  いさを
藍染めの藍柔らかき東風の街   いさを 
干鰈余生裏向き表向き       茜
落ちてなお崩さず緋色吐く椿    満壽枝
ざわざわと夜の校庭花辛夷     汀子
満願の湯を溢れさす遍路宿     夏生
蜥蜴出て用事なき身をもてあます 和士
紺と緋で色紙で足る雛祭り     幸司
 

花藻 669
(平成13年7月)

さくらんぼ一粒づつに灯を宿し         いさを
ひとときは女でいたい夏帽子           茜
百足虫の悲運ひと世にしゃりしゃり出で    汀子
折り紙を折って兜の角を立て          夏生
天と線描きて蛍の闇動く             青波
麦秋や酒屋へ一里黄泉へ二里         和士
人生は還暦からよ花菖蒲            幸司
音立てて崩る青春青あらし           紀子
乗り継いで旅を気ままに遅桜          春月

花藻 668(平成13年6月)

    風は自在に散るゆく花は人臭き       いさを
    空の青踏んでシートの花見客      茜
    沖といい遠いといい 春霞        汀子
    子育て期古り地球儀に春埃       夏生
    花冷えという美しき一語かな       青波
    明日よりも今日が大事と花は葉に    みゆき
    登り来て視野に展けし花・花・花     幸司
    深海魚たらむ春暁の底をゆく       幸子
    陽炎を歩いて女透きとおる         きぬ
    少年の大志は一つ揚雲雀         となみ
    春一番青い帽子を追いかける       須美 

花藻 669(平成13年7月) 
                春昼やロボット犬の眼が睡る     いさを
                  ほほかぶり弱みは見せぬ彼岸婆    茜
                 分校の生徒三人燕来る         和士
                 花堤眩しき恋の落ちており       汀子
                 鍵穴に啓蟄の日の風抜ける      満壽枝
                 薄紙でおおえば雛のまた眠る     芳子
                 命名の墨黒々と春兆す         夏生
                 空っぽの心を満たす花辛夷      幸司 
  
花藻 666(平成13年4月)

風雪を幹に刻みて梅匂う       いさを
病む脚に履き物重し牡丹の芽    千代子
如月に苦虫つぶす鬼瓦        茜
少年に男の匂い春兆す        夏生
寒緊まる地鎮の祝詞朗々と      幸司