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ひとすじの煙山家に秋深む 廣子
過去消したつもりの煙落ち葉焚 圭子
煙ほど秋刀魚は焼けておらざりし 千枝子
うす煙残し刈田の暮れはじむ 道枝
観覧車雨に煙りて夏終わる 花恵
斜めに切る竹の花筒終戦日 昭一
月を見る総身月となりていし 今日子
秋霖や悔いひきずりて気の重く 雄三
紺の玻璃破り競泳始まりぬ いさを
大花火果てて星降る湖となる 夏生
指先に女の匂い風の盆 武人
鉄棒に余熱の残す夏の暮れ 嘉典
自尊心どこまで育つ雲の峰 京子
故郷の社飲み込む蝉時雨 幸司
スーパーで握り飯買う敗戦忌 いさを
大湖より視線を奪う赤とんぼ 茜
稲光玻璃串刺しに眠れぬ夜 光栄
水芙蓉崩るるときも風に酔う 満寿枝
唯心論唯物論や水を打つ みどり
逝く秋へ形相柔き鬼瓦 夏生
秋天に少年の夢「くじらぐも」 幸司
鯛焼きの餡のあつあつ東風の街 いさを
持ち慣れぬ花持ち男子卒業す 茜
白梅は青磁の壺に夢満たす 光栄
風光る定年という誕生日 夏生
何もかも不信の世となり日脚伸ぶ 青波
おだやかや和顔愛語という言葉 和士
作務僧の素足に絡む春北風 幸司
山からも海からも湧く春の雲 政子
多感なる少年に濃き雛の闇 幸子
花藻 690号(2003年4月)
風が研ぐ刃の如き寒三日月 いさを
不運など無いよころころ冬菫 茜
水えくぼ百羽の翳に春隣り 満壽枝
人生とは青春議論風光る 夏生
着ぶくれて己が心見失う 青波
ふるさとへ雲の流るる針供養 和士
胸中の屈折青き蜃気楼 夕月
猛吹雪妻でも母でもない時間 近江
宇宙船乗らばかくとや風三日 となみ
雪積むやだんまりの待ち蒼い町 春月
巫女の指まっすぐ伸びて梅日和 幸司
花藻 689号(2003年3月)
満ちて来し汐が岩噛む寒月光 いさを
平穏と言うひとときや鴨動く 茜
珊瑚の実童話のごとく鳥がきて 光栄
冬萌えて生きる証の紅を曳く 満壽枝
いくさ火の中の羽子板緋の残像 みどり
初不動動くほど火を煽り 夏生
子には子の人生ありて年果つる 青波
二日はや旅に出よと鳶の笛 和士
初みくじ我が人生は賭けられず となみ
不揃いの蕎麦を啜りて去年今年 紀子
女正月嬰からもらう大欠伸 幸司
2月(688号)
虎落笛都会に尖るもの多く いさを
生も死も大琵琶も抱く冬霞 茜
石仏と語り合ひたく紅葉径 光榮
冬夕焼けいつも鬼だったかくれんぼ みどり
白と青ばかり鮮やか冬花火 夏生
紅葉真っ只中にいて寂し 青波
真っ白な頁のときめき日記買う 幸司
虚しさを鳴いてまぎらす冬の鳶 和士
枯野来て煩悩の歩がつんのめる 修
グラタンのふつふつ煮えて石路の花 春月
虎落笛女独りの夜は高し となみ
親子という故の脆さや冬の蝿 紀子
土よりも土の色濃き落葉かな 喜守
散り残る紅葉の色の錆にけり 昭一
1月(687号)
屠蘇の盃酌めば口でるわらべ歌 いさを
若水をくむより厨年立ちぬ 満壽枝
校庭の広さを凧が独り占める 夏生
歌留多とる撥ねるとばされし恋の歌 茜
きらきらと初日の揺るる髪飾り 青波
自分知ることより始め初日記 紀子
初日記少し構えて書き出せり 幸司
地球儀をくるくる回し去年今年 和士
必勝の文字筆太に年新た 嘉典
追いつけぬ電子文化や夜長の灯 喜代子