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 おろぎ事件(090510)

 一年生の教室、学級担任がしばらくの時間、教室を空けたとたん大騒ぎの様子になった。学習の指示をしているが、担任がいるときだけが勉強と思っている一年生には、通じない。 最初、席をはずしたのは、朝、こおろぎを家から持ってきた子。元気かどううかが気になったのだろう。虫かごを自分の机へ持っていった。 それがきっかけになって、少し離れた子が、虫かごを見に行く。さらに、何かわからずについて行く子。肩に手が触ることが引き金になって口論。
通りかかったのは、教室がざわざわしている最中。顔を見て、要領よく座る子、
「こおろぎを勝手にもってきた」
と、教えにくる子(告げ口のようにも見える)。収拾するために、したことを尋ねる。
「こおろぎを取りにいった人がいる。騒がしかった。」
一番、騒いでいたように見える子が、得意そうに騒がしかったこの名前を挙げていく。まるで、自分は何もしなかったように話を広げていく。
このまま、話を聞いていくと、一人だけいい子で、後はみんないけない子のように聞こえるので、
「あなたの話を聞いていいると、あなたは、とってもいい子に聞こえるけれど、そう考えていいの」
と確認する。とたんに黙ってしまう。都合がわるくなると黙ってしまうので、できごとを解きほぐしていった。実は、自分も立ち歩いたのだが、それがはっきりすると注意を受けるので、こおろぎを最初に取りに行った人のことを述べたのである。
子供の知恵として、誰かを挙げれば、自分のしたことは黙認されるということを身に付けてのだろう。
このまま、ではいけないので、したことを順位思い出せ、よいことと、辛抱すればよかったことを整理していった。
ここまで話をせいりして、やっと、自分の非を認める発言と「ごめんさい」が出てきた。
推察をするに、おそらく、家でも同じで、知っている言葉をならべ、自分の非を薄めるような言い方が受け入れられているのだろうとも思った。
よく話ができる子の落とし穴である。心が育たないと話だけが一人歩きする事例として学ぶできごとであった。