作品鑑賞(2008/6月号)
○折からの風にめらめら花篝
みよ子
夜桜の風情を引き立てるために焚く篝火が風で揺れている風景。めらめらと揺れていることが桜の艶やかさを引き出し、篝火と 夜桜の雰囲気を巧みに表しています。
○入園の子手足一緒に進みけり 雅子
親の手を離れ、式場に向かう園児は緊張しています。それは園児の手足が一緒に動くことからも分かり、それ見守る式場の和らぎ が伝わってきます。
○宇宙より見れば地球は春の星 敏
宇宙のことが話題になるこの頃。色々課題を抱える地球も、宇宙では一つの星という見方、そして、「宇宙よりみれば」という着想が スケールの大きい作品になりました。
○春麗ら子ら賑やかに通学路 敏子
和やかな春日、子ども達の明るい声が弾く通学路の明るい様子が作品になりました。戯れる子やおしゃべりをする子など輝く子ども の姿を「賑やか」と捉えたことから、学業を終えて帰路につく様子がよく分かります。
○湖に春の光の溶けしあを 英二
穏やかな春の湖に差し込んでいる春日。湖の彩りに目を注ぎ「あを」と捉えて感性が作品を魅力あるものにしました。
○シャボン玉吹きて膨らむ児の頬っぺ 佳風
幼い児がシャボン玉遊びに夢中になって吹く細い管。吹く度に膨らむ頬っぺ。管から飛び出す五色の玉。穏やかな春のひとときの風 情を感じる作品です。
○思い出は常に手の中桜貝 弘子
桜の花弁のような色彩をしているので桜貝の名がついているようです。波打ち際で拾った貝を大事にし、時々、手にとって思い出を たぐる心を柔らかい言葉でまとめています。。
○全身で欠伸する嬰や窓若葉 清子
赤ん坊の欠伸は明るく、伸びやかでおおらか。それはなんともいえない可愛いさが溢れ出たものです。る。みずみずしさを表した季 語の若葉との一体感を醸し出しています。
○間違いの電話の声も五月晴れ 華享
慌てて出た電話の向こうからは、五月の晴天のような声。間違い電話だったのでしょうが、それが苦にならないという意味でしょ うか。日常の些細な事も見逃さず句にまとめました。
○少年の空へ大きく卒業す 一弥
希望と喜び、そして、不安を胸に卒業する少年の気持ちを代弁したような俳句。「空へ
大きく」に続く言葉を探しました。羽ばたく 飛ぶ、翔るなどが思い浮かぶ楽しい作品です。
○抽出しに出番待ちたる種子袋 弘恵
春が近づきを待っているのはたくさんあります。その中に種袋があります。「出番を待ちたる」が想像の芽を広げます。 ○寒風 に牙剥く波涛日本海 正子