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作品鑑賞(24年1月 花藻2月号)

作品鑑賞(花藻集TーU 2月号より)
好きな句、共感できる世界について、感じたことや考えたことです。
◎一言が胸に突き刺る隙間風
胸を突き刺す一言。言葉の重さを相手は知っているのだろうかと人間関係の隙間にも思いが広がる季語の隙間風です。
◎訂正印だらけの人生煤払い
煤払いから新しい年を迎える引き締まった気持ちが伝わってきます。一つの区切りとして人生を重ねる。間違いを正し実直に生きてきた誇りを訂正印と言い換えているところ巧みさに魅力を感じます。
◎錆びた鎌これも遺品や冬枯るる
錆びた鎌にはその鎌を使った人の心が残っている。その鎌をしみじみと見ながら思い出の糸をたぐる。在りし日の姿を思い出す作者の気持ちが作品に詰まっています。
◎寒に入る夕日の向こうは我が故郷
夕日を見ていると故郷が恋しくなる気持ちに共感します。子どもの頃の思い出や父母のこと、この季節は冬支度に忙しかったことなど、共感しながら故郷に導かれ印象に残りました。
◎街角のお地蔵様の冬支度
日頃は見過ごすようなことに目を向け感動を膨らませた作品です。街角と地蔵様から伝わってくる響きと冬支度とい言葉が年末の風景と人の心の温かさが伝わってきました。
◎風音の何かもの言ふ冬はじめ 
木枯らしや雪を運ぶ風。雨戸を叩いたり電線を揺らしたりして通り過ぎていきます。風音がなにか物を言って通り過ぎていくという捉え方に繊細です。静けさも伝わってきます。
◎大根引への字くの字に身をかへる
への字くの字という表現が大根引きの様子をしっかりと伝えています。大根引と組み合わせることにより生き生きとした作品になっています。
◎電飾の高さを競う年の暮れ
災害や社会不安な一年でした。来年こそはよい年にしたい気持ちと気持ちを強く持ちたいという様々な気持ちが絡まっている年末。
街の姿を「高さを競う」と捉えた感性が魅力の作品です。
◎マフラーの長さに呑まる背丈かな
暖かそうで上品、上等なマフラーが印象に残りました。「長さに呑まる」という言葉がに明るさ、心の広さを感じたからです。好きな作品です。
◎極月や薄い暦にメモ数多
何かと細かな用事が多い年末です。その様子が、薄い暦はメモ数多という表現で生き生きとした作品になっています。
◎夕暮れが寒波を連れてやって来る
季節の変化を感じるのは寒さや暑さを感じるときです。その季節感をどのように表現するかを考えるのが楽しいのです。「寒波を連れて」は味わいがあります。
◎冬がすみ湖の対岸見えぬまま
いつもは対岸の風景がはっきりと見える。しかし、冬がすみで見えないといういつもと違う湖。日本画を見ているような気持ちになりました。

作品鑑賞(5月)

  ○寒風に牙剥く波涛日本海  正子
  冬の日本海の様子、特に波や風の激しさが作品から伝わってきます。「牙剥く」の主張が句に生きています。

○雛の顔見詰む嘘まで見抜かされ 恵美子
雛を愛しく見ている作者、雛から見られているという一体感が作品を引き締めています。「嘘まで見抜かされ」は見事です。

○夕東風や塾の自転車もたれ合い  久子
夕東風と塾の自転車が響き合って一体感があります。自転車の主は受験を控えた小中学生。教室で難しい課題に取り組んでいる姿様子が見えてきそうです。

○コーラスの一員となり雛祭  かつ子
コーラス部に所属した、仲間と一体になった、上達などの充実感を「なった」という断定表現から想像しました。

○春一番ジャングルジムを駆け抜けり  正明
春先に吹く強い南風がジャングルジムを駆け抜けたとう言う意味。春を待つ子ども達の心を思う気持ちを強く感じる作品です。

○水仙や一塊の登下校  雅尾
児童の登下校は賑やかです。それぞれに勝手に喋り、笑い、動き回ります。その中でも、一年生は黄色いランドセルカバーが定番です。季語の水仙が生きています。

○入学に彩り添えし保護者席  華掌
入学式の緊張した雰囲気と我が子の入学の様子を不安と喜びで見守る保護者席の様子を作品から読み取りました。和服、洋服の保護者席に焦点を定めたことにひかれました。

○少年の球の速さや風光る  盛利
少年は甲子園の高校球児、あるいは草野球を楽しむグループ、中学校の部活動と考えていくうちに、投げ込むボールの速さや音が思い浮かびます。この春ヒットした映画「バッテリー」の感動が蘇りました。